「実務家教員」について公式の定義はありませんが、一般には、企業・官公庁その他における実務経験を通して培われた知識・スキル等を活かして、大学及び大学院(専門職大学及び専門職大学院を含む)、短期大学(専門職短期大学を含む)、高等専門学校、又は専門学校、すなわち各種高等教育機関において、教育・研究その他の職務に従事する教員を意味します。「社会人教授」などと呼ばれることもあります。
実務家教員の数については、高等教育機関のうち大学に限ったデータですが、文部科学省が3年ごとに行う学校教員統計調査によると、直近のデータである2018年度中に新規採用された大学教員11,494人のうち、採用直前の勤務先が民間企業であった者は1,150人で、1割(10.0%)を占めます。このほか、官公庁が489人(4.3%)、自営業が116人(1.0%)です。計15%程度に上ります。
上述のデータは、企業・官公庁等から大学教員に転職した人達ですが、これ以外にも、例えば、企業で勤務を続けながら非常勤講師として週1回大学で授業を行うような方々も存在しますし、今後は、クロスアポイントメント制度により社員としての身分を維持したまま大学へ出向する人など多様な働き方も想定されます。
グローバル化が進み、知識経済が到来する中、人口減少社会となった日本にとって、人材育成の質の向上は、コロナ禍前からの懸案です。日本経済の長期低迷やG7中最下位の労働生産性といった現状に鑑み、人材育成の変革は、我が国にとって喫緊の課題です。ところが、日本の高等教育には、授業外学習時間の少なさや、社会人の学び直しの低調さなど、大きな課題があります。
以上のような背景から、今日、学生も社会人も学び続けチャレンジし続ける社会の実現のため、中心的役割を担う「実務家教員」への期待はかつてなく高まっています。求められる実務家教員は、学びと仕事をつなぐことにより、学生の動機付けを高めるとともに、社会人をリカレント教育へ惹き付ける「教育者」です。
こうしたニーズを踏まえ、2019年度に文部科学省が開始した「持続的な産学共同人材育成システム構築事業」において、東北大学、名古屋市立大学、社会構想大学院大学、舞鶴工業高等専門学校、それぞれを代表校とする全国4拠点が、体系的な実務家教員育成研修プログラムを実施し、教育のプロとしての実務家教員候補者を輩出するとともに、現職実務家教員のスキルアップの機会を提供しています。
実務家教員として活躍する方々のインタビューや、実務家教員に関する調査研究を掲載しています。是非ご参照ください。